29/05/2026
「深呼吸が体にいい」の、本当の理由
「リラックスのため」だけじゃない。呼吸には、もっと深い仕事があります。
「深呼吸してみてください」——これは、緊張したときや気持ちを落ち着かせたいときに、誰もが一度は言われたことのある言葉だと思います。
でも、なぜ深呼吸をすると落ち着くのでしょうか。「なんとなくリラックスできる気がする」という感覚はあっても、その理由を正確に説明できる方は意外と少ないですよね。
今回は、深呼吸が体に与える影響を横隔膜・体幹の安定・自律神経という3つの観点から整理してみたいと思います。スポーツや運動とは縁遠い方にも、きっと「なるほど」と思っていただける話です。
■ 呼吸の主役は「横隔膜」
まず前提として、呼吸は肺が自力で動いているわけではありません。肺は自分では膨らんだり縮んだりできない、受け身の臓器です。
呼吸を動かしているのは筋肉——特に「横隔膜」です。横隔膜は、肺の底面に位置するドーム状の筋肉で、息を吸うときに収縮して下に引き下がり、胸腔(肺のある空間)を広げることで空気を引き込みます。息を吐くときは逆に緩んで元の形に戻ります。
つまり、深呼吸とは横隔膜を十分に動かす呼吸のことです。
浅い呼吸(胸だけで行う呼吸)では、横隔膜があまり動かず、肺の下部が十分に膨らみません。慢性的に浅い呼吸が続くと、横隔膜の柔軟性や動きの質が低下する可能性があります。
■ 横隔膜は「体幹の屋根」でもある
ここが、スポーツやトレーナーの視点から面白いところです。
横隔膜は呼吸筋であると同時に、体幹を安定させる筋肉のひとつでもあります。横隔膜(上)・腹横筋(前・横)・骨盤底筋群(下)・多裂筋(後ろ)——これら4つが連携することで、体の「内側からの安定」が生まれます。
いわば横隔膜は体幹という筒の「屋根」にあたる存在で、横隔膜が十分に動かなければ、体幹全体の機能も落ちやすくなります。
「体幹を鍛えたい」「腰が安定しない」という方が呼吸を見直すと改善のきっかけになることは、臨床でも珍しくありません。
■ 深呼吸が「落ち着く」理由:自律神経との関係
「深呼吸するとリラックスできる」というのは単なる気のせいではなく、自律神経の仕組みによるものです。
自律神経には、活動・緊張時に優位になる「交感神経」と、休息・回復時に優位になる「副交感神経」があります。このバランスを整えるカギのひとつが、呼吸のリズムです。
息をゆっくり吐くことで、副交感神経が優位になりやすくなる(迷走神経が興奮し心拍数減少)ことが研究でも示されています。特に「吸うより吐く時間を長くする」呼吸法は、心拍を落ち着かせる効果があるとされています。
「4秒吸って、8秒かけてゆっくり吐く」というようなパターンを試してみるだけで、体の緊張がスッと緩むのを感じられる方も多いです。
これは特別なトレーニングではなく、誰でも今すぐできることです。
■ 現代人が「浅い呼吸」になりやすい理由
デスクワーク中の前のめりの姿勢、スマートフォンを見るときの猫背、慢性的なストレス——これらはすべて、横隔膜の動きを制限し、呼吸を浅くする原因になります。
また、体幹の緊張が過剰になっているとき(例えば常にお腹に力が入っている状態)も、横隔膜が十分に下降しにくくなります。
「特に運動不足というわけじゃないのに、なんとなく疲れやすい」「肩や首が慢性的に張っている」という方は、呼吸のパターンに原因が潜んでいることがあります。
■ 当院での考え方
施術の中で、「呼吸が浅いかも」と感じる方に意外と多くお会いします。コンディションを整えること、横隔膜をはじめとした呼吸に関わる筋肉の緊張を緩めること——これが、慢性的な肩こりや腰の張り感の改善につながることがあります。
深呼吸はコストゼロの「自己調整ツール」です。正しく使えれば、体幹の安定にも、自律神経の調整にも、疲労回復にも働いてくれます。
「呼吸くらいは自然にできている」と思っていた方も、ぜひ一度、自分の呼吸に意識を向けてみてください。
話好きなもので、施術中にもついこういう話をしてしまいますが(笑)、体の仕組みを「知ること」が、セルフケアの第一歩だと思っています。
【ご予約・お問い合わせ】小竹向原駅すぐ。一人でお迎えするので、気兼ねなくどうぞお越しください。
【代表プロフィール】
柔道整復師、NSCA-CPT。2012年2月、練馬区・小竹向原に開院。大学運動部や実業団チーム等のトレーナーとして活動。アスリートから一般の方まで、一人でじっくり向き合うスタイルで施術・指導を行っています。現在同志社大学水泳部帯同トレーナー、日本指圧専門学校パーソナルトレーナーコース非常勤講師兼務
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